戸山流とは

戸山(とやま)流は、その特殊な生立ちから説明する必要があります。
戦前、日本陸軍戸山学校と呼ばれる戦技学校 が 東京の新宿にありました。現在の新宿区戸山公園は、その跡地となります。

ここでは、近代戦闘技術に関するあらゆる研究がなされていました。

古流居合を近代の白兵戦で十分に効果させる事を目的に、日本国内の多くの剣術家を招聘(しょうへい)して軍刀の 実戦操法の研究が行われ、大正14年「戸山流居合術」と名付けられました。

これらは代表的な古流の技から基本的な7本の形を野戦の為に立居合に変えて、軍刀帯刀本分者へ教育がなされました。

陸軍に請われその編纂(へんさん)にあたり中心となった人物が剣聖中山博道氏である事は広く知られております。

戦後は戸山学校の終焉と共に、これら編纂された軍刀操法も消滅に至りましたが、旧軍出身者や自衛隊 関係者の努力によって戸山流居合道として生まれ変わり、現在に至るまで国内の各地にその道統を広げております。

現代の戸山流 居合道は、その実戦的な特徴を生かしつつも「人を育む」居合道としてその道程を歩んでおります。

戸山流を構成している人達の中には、自衛官OB、自衛官、警察官OB、消防官、教職員など公務に携わる 経験者が大勢参加しています。

これらの人材と共に私達が働きかけるところは、平和憲法下における社会理念を妨げる事無く、平和の尊さを 礎(いしずえ)にして、小は地域社会から大は国際社会に至るまで、社会に有用な日本人を育成する事にあります。

また生涯学習と言われ若年層のみならず壮年層の入門者が多いことも戸山流の特徴です。

この事は戸山流が立居合を基本としていることから膝に無理を掛ける事無しに、誰でも居合道の修養を行う事が 簡単に出来る事を証明しております。既に小学生から85歳までの老若男女が元気に修養をしています。

修養の基本は、基礎刀法(10本)→ 基本居合(8本)を順次習得するものですが、あくまでも自分のペースで習得しますので過去の運動経験などは何も必要としません。

居合道としての戸山流は、人に対する優しさと己に対する厳しさを自然に身に付けさせてくれます。それは、居合道を己の武威を誇らんが為の道具とする戒(いまし)めにも通じるものです。

古流の御詠歌(ごえいか)にも下記の様に唄われております。

「上手とは、外を誹(そし)らず自慢せず、身の及ばぬを恥じる人なり」